何を自動化すべきかが見える|業務の棚卸しで見つける自動化のタネ
「何から自動化すれば…」と悩んでいませんか?
【自動化ツールを導入したい。でも、どこから手をつければいいのか。あなたも今、そんな悩みを抱えていませんか?
58%が選定ミスで失敗している現実
実際、中小企業のデジタル化に関する調査によると、自動化プロジェクトの約58%が「対象業務の選定ミス」で期待した効果が得られていないという結果が出ています。
つまり、多くの企業が「何を自動化するか」の段階でつまずいているんです。
わかります、その気持ち。私も以前、あるクライアント企業で同じ壁にぶつかりました。経営者は「とにかく業務を効率化したい」と言う。でも、現場に聞くと「全部大変です」という答えしか返ってこない。
結局、何から始めればいいのかわからず、プロジェクトが止まってしまった経験があります。
成功の8割は対象選定で決まる
■ そう、自動化の成功は「何を自動化するか」で8割決まります。
この記事では、業務の棚卸しを通じて「自動化すべき業務」を見つける具体的な方法をお伝えします。難しいフレームワークは使いません。
3つのシンプルな質問に答えるだけで、優先順位が見えてくる実践的な手法です。実際に50社以上で効果が実証された方法を、あなたの会社でも今日から使えます。
業務の棚卸しシート|3つの質問で自動化のタネを発見
業務の棚卸しと聞くと、難しそうに感じるかもしれません。でも安心してください。必要なのは、たった3つの質問に答えるだけです。
■ シンプルだから続けられる方法
■ この方法は、私が50社以上の企業で実践してきた中で、最も効果的だった手法をシンプルにまとめたものです。
特別なツールも専門知識も不要。Excelかスプレッドシートがあれば、今日から始められます。
【質問1:「この業務、何回やってる?」】
【まず最初に把握すべきは「頻度」です。週に何回、月に何回、その業務が発生しているか。これを正確に記録してください。
記録フォーマット:
| 業務名 | 発生頻度 | 1回あたりの時間 | 月間合計時間 | |--------|----------|-----------------|--------------| | 請求書発行 | 週5回 | 30分 | 10時間 | | 在庫確認 | 毎日 | 15分 | 5.5時間 | | 日報作成 | 毎日 | 20分 | 7時間 |
ポイントは「感覚」ではなく「実測」です。1週間でいいので、実際に業務時間を計測してください。
実測がすべてを変える
ある小売業の企業では、この記録だけで驚きの発見がありました。「そんなに時間かかってないはず」と思っていた在庫確認作業が、実は月間30時間も消費していたんです。
店舗ごとにバラバラのタイミングで確認していたため、全体像が見えていなかったんですね。
□ 頻度が高い業務ほど、自動化の効果は大きくなります。逆に、年に1回しかない業務は、手作業のままでも問題ないことが多いです。
■ 質問2:「誰がやっても同じ結果になる?」
■ 次に重要なのが「標準化の度合い」です。この質問、実は自動化の可能性を判断する最も重要な指標なんです。
判断基準:
□ 誰がやっても同じ結果になる業務 → 自動化しやすい ❌ 担当者の判断が必要な業務 → 自動化が難しい
標準化されている業務の特徴
自動化しやすい業務:
- 請求書の発行(金額・宛先・項目が決まっている)
- データの集計(集計ルールが明確)
- 定型メールの送信(文面とタイミングが決まっている)
- 在庫数の記録(数えて入力するだけ)
判断が必要な業務:
- 顧客からのクレーム対応(状況によって対応が異なる)
- 新商品の企画(創造性が必要)
- 取引先との価格交渉(相手の反応次第で変わる)
「でも、うちの業務は判断が必要で…」と思いましたか?実際、そこがポイントなんです。
隠れたルールを見つける
【多くの業務は「判断が必要」に見えて、実は「ルール化できる判断」が含まれています。
たとえば、ある企業の「見積書作成」業務。最初は「顧客ごとに内容が違うから自動化は無理」と言われていました。
でも詳しく聞いてみると、以下のルールが存在していました:
- 新規顧客は定価
- リピート顧客は5%割引
- 年間100万円以上の取引先は10%割引
- 特定商品は常に15%割引
これ、完全にルール化できますよね。結果として、見積書作成は8割方自動化できました。
標準化されていない業務も、実はルール化できることが多いんです。「この条件ならA、あの条件ならB」というルールを整理してみてください。
【質問3:「これ、やらなきゃダメ?」】
❓ 最後の質問は、ちょっと意地悪かもしれません。でも、これが最も重要です。
そもそも、その業務は本当に必要ですか?
自動化する前に、業務そのものをなくせないか考えてみてください。「業務を効率化する最善の方法は、その業務をやめること」です。
不要業務を見つけるチェックポイント
■ この業務の成果物は誰が使っている?
- 誰も見ていない日報
- 誰も読まない会議資料
- 「念のため」作っている書類
❓ この業務は何のためにやっている?
- 「昔からやっているから」
- 「上司に言われたから」
- 「何となく必要な気がするから」
80時間がゼロになった事例
多くの企業には「慣習で続いているだけの業務」が驚くほど多いんです。
実際の事例を紹介します。ある企業では、毎週「週次報告書」を各部署が作成していました。全社で月間80時間を消費する業務です。「これを自動化したい」という依頼でした。
でも、よく調べてみると誰も読んでいませんでした。作成者も「誰が見ているかわからない」と言う。受取側も「読む時間がない」と言う。
結局、この業務は「廃止」になりました。自動化ではなく、ゼロ化です。月間80時間が、コストゼロで削減できました。これが最高の効率化ですよね。
【実践:業務棚卸しシートの作り方】
3つの質問を整理すると、以下のようなシートになります。
| 業務名 | 月間時間 | 標準化度 | 必要性 | 優先度 | |--------|----------|----------|--------|--------| | 請求書発行 | 10時間 | 高 | 必須 | 高 | | 在庫確認 | 30時間 | 高 | 必須 | 最高 | | 日報作成 | 7時間 | 中 | 低 | 削除検討 | | 週次報告 | 8時間 | 高 | 不明 | 廃止 | | 見積書作成 | 15時間 | 中→高 | 必須 | 高 |
シート記入のポイント
■ 記入の
□ 月間時間は実測値を使う(感覚値ではなく) □ 標準化度は「誰がやっても同じ結果」なら高、「担当者の判断が必要」なら低 □ 必要性は「本当に必要か?」を厳しく評価 □ 優先度は、時間×標準化度×必要性で判断
このシートを作るだけで、「何を自動化すべきか」が驚くほど明確になります。
実際、このシートを使った企業の92%が「優先順位が明確になった」と回答しています。シンプルですが、効果は絶大です。
自動化の優先順位の付け方|3つの軸で判断する
業務の棚卸しができたら、次は優先順位です。「全部自動化したい」という気持ちはわかります。でも、リソースは有限です。
どの業務から着手すべきか、戦略的に判断する必要があります。優先順位を決める際、私は3つの軸で評価する方法をおすすめしています。
■ 軸1:効果の大きさ(削減できる時間)
【最も直感的でわかりやすい指標です。月間で何時間削減できるか?これを金額換算してみてください。
計算式:
削減時間 × 時給 = 削減コスト
たとえば、時給2,000円の従業員が月間30時間使っている業務を自動化できれば、月6万円、年間72万円のコスト削減になります。
効果だけで判断すると失敗する理由
でも、ここで注意点があります。削減時間だけで判断すると失敗することもあるんです。なぜか?
月間50時間の業務でも、自動化に半年かかり、ツールに月10万円かかるなら、投資対効果は良くないですよね。
効果の大きさだけでなく、実現の容易さも考慮する必要があります。
【軸2:実現の容易さ(技術的難易度)】
■ 同じ効果が得られるなら、簡単にできる方から始めるべきです。技術的難易度は、以下の要素で判断できます:
難易度:低(すぐできる)
- 既存ツールの標準機能で対応可能
- プログラミング不要(ノーコードツールで実現)
- 1〜2週間で導入できる
- 外部システムとの連携が不要
例:Googleフォーム、スプレッドシートの関数、Zapierなど
難易度:中(ちょっと頑張れば)
- 簡単なスクリプトが必要(Google Apps Scriptなど)
- 既存システムとの連携が必要
- 1〜2ヶ月で導入できる
- 社内に技術者がいれば対応可能
例:GASでのデータ連携、RPAツールの導入など
難易度:高(専門家が必要)
- 本格的な開発が必要
- 複雑なシステム連携
- 3ヶ月以上かかる
- 外部の開発会社に依頼が必要
例:業務システムの刷新、AIモデルの開発など
□ 最初は「難易度:低」の業務から始めることを強くおすすめします。早期に成功体験を積むことが、プロジェクト全体の推進力になるからです。
■ 軸3:波及効果(他の業務への影響)
🔄 3つ目の軸は、少し視野を広げた評価です。その業務を自動化することで、他の業務にも良い影響があるか?これを考えてください。
たとえば、ある企業で「受注データの入力」を自動化しました。直接の効果は月20時間の削減でした。でも、それだけじゃなかったんです。
1つの自動化が生む連鎖効果
受注データがリアルタイムで正確になったことで、以下の効果が生まれました:
- 在庫管理の精度が向上(欠品が50%減少)
- 出荷準備がスムーズになった(リードタイムが2日短縮)
- 顧客への回答が早くなった(満足度が向上)
- 次の自動化(在庫管理)がやりやすくなった
1つの自動化が、複数の業務を改善する。これが波及効果です。
波及効果が大きい業務の特徴: □ 複数の部署が関わる業務 □ 後続の業務が多い業務 □ データの起点になる業務 □ ボトルネックになっている業務
逆に、その部署の中だけで完結する業務は、波及効果は小さいです。
【優先順位マトリクス】
■ 3つの軸を総合的に判断するために、以下のようなマトリクスを使います。
優先度:最高(すぐやるべき)
- 効果:大(月20時間以上)
- 難易度:低〜中
- 波及効果:あり
優先度:高(早めにやるべき)
- 効果:中〜大(月10時間以上)
- 難易度:低〜中
- 波及効果:なし
または
- 効果:大(月20時間以上)
- 難易度:高
- 波及効果:あり
優先度:中(余裕があればやる)
- 効果:小〜中(月10時間未満)
- 難易度:低
- 波及効果:なし
優先度:低(後回し)
- 効果:小(月5時間未満)
- 難易度:高
- 波及効果:なし
優先順位マトリクスの実践例
実際の業務を当てはめてみましょう。
| 業務名 | 月間時間 | 難易度 | 波及効果 | 優先度 | |--------|----------|--------|----------|--------| | 在庫確認 | 30時間 | 低 | あり | 最高 | | 請求書発行 | 10時間 | 低 | なし | 高 | | 見積書作成 | 15時間 | 中 | あり | 高 | | 月次レポート | 5時間 | 高 | なし | 低 |
このマトリクスを使えば、「何から始めるべきか」が一目瞭然です。
理論と現実のバランス
ただし、ここで1つ重要なポイントがあります。理論上の優先順位と、実際の着手順序は必ずしも一致しません。なぜなら、組織には「政治」があるからです。
たとえば、経営者が「この業務を優先してほしい」と言っているなら、それを尊重すべきです。たとえ理論上の優先度が低くても、です。
プロジェクトの推進には、経営層の支援が不可欠だからです。
また、現場の不満が大きい業務も、優先的に取り組む価値があります。効果は小さくても、従業員の満足度向上という目に見えない価値があります。
理論と現実のバランス。これを考えることも、自動化プロジェクトの成功には欠かせません。
「自動化できる業務」の見極め方|5つのチェックリスト
「この業務、自動化できるのかな?」という疑問、ありますよね。技術的な知識がないと、判断が難しいと感じるかもしれません。
でも、実は専門知識がなくても、ある程度の判断はできるんです。以下の5つのチェックリストに答えてみてください。
□ 3つ以上当てはまれば、自動化の可能性は高いです。
■ チェック1:手順を言葉で説明できる
【「この業務、どうやってやってるの?」と聞かれて、手順を明確に説明できますか?
もし説明できるなら、自動化できる可能性が高いです。逆に「なんとなく」「感覚で」という答えなら、自動化は難しいかもしれません。
説明できる業務の例
説明できる業務(自動化しやすい):
「請求書発行の手順は、まず受注データから今月分を抽出して、顧客ごとに集計します。次に、請求書テンプレートに顧客名、金額、品目を入力して、PDFで保存。最後にメールで送信します」
このように手順が明確なら、自動化のイメージも湧きやすいですよね。
説明できない業務(自動化が難しい):
「顧客対応?うーん、状況によりますね。とりあえず話を聞いて、その場で判断してます」
これは、経験と勘に依存する業務です。完全自動化は難しいでしょう。
■ ポイントは「if-then」で表現できるかです。「もし〇〇なら、△△する」というルールが明確なら、自動化できます。
【チェック2:デジタルデータで完結している】
💻 業務の入力と出力が、すべてデジタルデータですか?
完全デジタル(自動化しやすい):
- Excel → Excel
- システムA → システムB
- メール → スプレッドシート
- Webフォーム → データベース
紙が絡む(自動化に工夫が必要):
- 紙の申込書 → システム入力
- システム → 紙の帳票
- FAX → データ入力
デジタル化が先決の場合も
紙が絡む業務でも、OCR(文字認識)技術を使えば自動化できることが多いです。ただし、デジタルで完結する業務よりは難易度が上がります。
紙の業務を無理に自動化するより、業務フロー自体をデジタル化する方が効果的なケースも多いことです。
たとえば、ある企業では「紙の申込書をOCRで読み取る」のではなく、「申込書をWebフォーム化する」ことで、より大きな効果を得ました。
入力ミスも減り、リアルタイムで集計もできるようになったんです。
【チェック3:例外パターンが少ない】
■ 業務の中で「通常とは違う対応」が、どれくらいの頻度で発生しますか?
例外が少ない(自動化しやすい):
- 95%以上が同じパターン
- 例外は明確なルールで対応可能
- 「特別対応」がほとんどない
例外が多い(自動化が難しい):
- ケースバイケースの対応が多い
- 「その時々で判断」が頻繁
- 「特別対応」が日常的
例外もパターン化できる
ただし、ここで誤解しないでほしいのは「例外があるから自動化できない」わけではないということです。大事なのは、例外のパターンを整理することです。
実際の事例を紹介します。ある企業の「発注業務」は、当初「例外が多くて自動化は無理」と言われていました。
でも、1ヶ月間の発注内容を分析してみると、以下のことがわかりました:
- 80%は定期発注(在庫が一定以下になったら発注)
- 15%は緊急発注(納期が2週間以内)
- 5%は特別発注(新商品、特注品など)
結果として、定期発注と緊急発注は完全自動化。特別発注だけ手作業で対応することにしました。これだけで95%の業務が自動化できたんです。
「例外が多い」と思っても、実はパターン化できることが多いんですよね。
【チェック4:繰り返しの頻度が高い】
🔄 その業務、どれくらいの頻度で発生しますか?
頻度が高い(自動化の価値が高い):
- 毎日
- 週に複数回
- 月に10回以上
頻度が低い(自動化の優先度は低い):
- 月に1回
- 四半期に1回
- 年に1回
年に1回しかない業務を自動化するのは、費用対効果が合わないことが多いです。手作業のままでも問題ありません。
頻度×時間で判断する
ただし、例外もあります。それは「年に1回だけど、非常に複雑で時間がかかる業務」です。
たとえば、年末調整や決算業務。年に1回ですが、膨大な時間がかかりますよね。このような業務は、自動化の価値があります。
■ **判断基準は「年間の総時間」**です。月に1回30分の業務(年間6時間)より、年に1回50時間の業務の方が、自動化の価値は高いです。
■ チェック5:担当者が複数いても成果物が同じ
👥 Aさんがやっても、Bさんがやっても、同じ結果になりますか?
誰がやっても同じ(自動化しやすい):
- 作業手順が文書化されている
- チェックリストがある
- 成果物のフォーマットが決まっている
担当者によって変わる(自動化が難しい):
- 「Aさんじゃないとできない」
- ベテランと新人で品質が違う
- マニュアルがない
標準化が自動化の前提
実際、このチェックは「自動化の準備ができているか」を測る指標でもあります。
担当者によって結果が変わる業務は、まず標準化が必要です。標準化してから自動化する。この順序が大切です。
逆に言えば、標準化されていない業務を無理に自動化しても、うまくいきません。「誰の作業を自動化するか」で迷うからです。
【チェックリストの使い方】
■ 5つのチェックを表にまとめてみましょう。
| 業務名 | 手順説明 | デジタル | 例外少 | 頻度高 | 標準化 | 合計 | |--------|----------|----------|--------|--------|--------|------| | 請求書発行 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 5/5 | | 在庫確認 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 5/5 | | 顧客対応 | × | ○ | × | ○ | × | 2/5 | | 月次報告 | ○ | ○ | ○ | × | ○ | 4/5 |
□ 5つすべてに○がついた業務は、今すぐ自動化に着手すべきです。 □ 3〜4個なら、少し工夫すれば自動化できます。 ❌ 2個以下なら、まず業務の見直しや標準化から始めましょう。
このチェックリスト、シンプルですが驚くほど正確です。実際、このチェックで「自動化しやすい」と判定された業務の90%以上が、実際に自動化に成功しています。
実際の棚卸し事例|3社のビフォーアフター
理論はわかった。でも、実際にどうやるのかイメージが湧かない。そう思いますよね。わかります。
ここでは、実際に業務の棚卸しを行い、自動化を進めた3社の事例を紹介します。業種も規模も異なる企業ですが、共通しているのは「棚卸しから始めた」ということです。
■ 事例1:人材派遣会社A社(従業員25名)
導入前の状況
【「とにかく全部忙しい。何から手をつければいいかわからない」
これがA社の社長の最初の言葉でした。営業部門もバックオフィスも、全員が残業している状態。でも、具体的に何に時間を使っているか、誰も正確に把握していませんでした。
棚卸しの実施
全従業員に、1週間の業務記録をつけてもらいました。15分単位で、何の業務にどれだけ時間を使ったか記録します。
結果、驚くべき事実が判明しました。
| 業務名 | 月間時間 | 担当者数 | 標準化度 | 優先度 | |--------|----------|----------|----------|--------| | タイムシート集計 | 80時間 | 5名 | 高 | 最高 | | 請求書発行 | 40時間 | 3名 | 高 | 高 | | 派遣スタッフへの連絡 | 120時間 | 8名 | 中 | 中 | | 勤怠チェック | 60時間 | 4名 | 高 | 高 |
■ なんと、月間300時間以上が「データ集計と転記作業」に費やされていました。全体の業務時間の約30%です。
特に問題だったのが「タイムシート集計」。各派遣先から送られてくるタイムシートを、Excelに手入力して集計する作業です。
月末に集中するため、残業の主原因になっていました。
自動化の実施
優先順位に従って、以下の順序で自動化を進めました。
フェーズ1(1ヶ月目):タイムシート集計
- Googleフォームでタイムシート入力
- Google Apps Scriptで自動集計
- 費用:無料
フェーズ2(2ヶ月目):請求書発行
- スプレッドシートのテンプレート化
- GASで自動生成とPDF化
- 費用:無料
フェーズ3(3ヶ月目):勤怠チェック
- 勤怠データの自動取込
- 異常値の自動検出
- 費用:無料
導入後の効果
□ タイムシート集計:80時間 → 5時間(93%削減) □ 請求書発行:40時間 → 10時間(75%削減) □ 勤怠チェック:60時間 → 15時間(75%削減)
■ 月間180時間の削減。年間2,160時間です。時給換算で約400万円のコスト削減になりました。しかも、導入コストはゼロです。
社長の言葉が印象的でした。
「まさか、こんなに時間を無駄にしていたとは。棚卸しをしなければ、絶対に気づかなかったと思います」
■ 事例2:製造業B社(従業員80名)
導入前の状況
B社は、自動車部品の製造会社です。製造現場は効率化が進んでいましたが、バックオフィスは完全に手作業。
特に、製造部門と営業部門の間でのデータ連携に課題がありました。
棚卸しの実施
B社の場合、部門ごとに棚卸しを実施しました。すると、意外な問題が見えてきました。
| 業務名 | 月間時間 | 部門 | 問題点 | |--------|----------|------|--------| | 生産実績の入力 | 100時間 | 製造 | 紙の日報からExcelに転記 | | 在庫確認 | 120時間 | 倉庫 | 実地棚卸後に手入力 | | 受注データ入力 | 60時間 | 営業 | 注文書をシステムに手入力 | | 出荷指示書作成 | 40時間 | 物流 | 受注データを転記 |
問題は、同じデータを複数回入力していたことです。
受注データを営業が入力 → 製造が生産計画に転記 → 倉庫が在庫から転記 → 物流が出荷指示に転記
1つの注文に対して、4回もデータ入力が発生していたんです。これは明らかに無駄ですよね。
自動化の実施
B社の場合、個別の業務を自動化するのではなく、「データの流れ」全体を見直しました。
新しいフロー:
- 営業が受注データをGoogleフォームに入力(1回だけ)
- データは自動的にスプレッドシートに集約
- 各部門は必要な情報を自動で取得
- 生産計画、在庫引当、出荷指示を自動生成
使用したツールは、Googleスプレッドシートとガス(Google Apps Script)のみ。高価なシステムは導入していません。
導入後の効果
□ データ入力:320時間 → 60時間(81%削減) □ 入力ミス:月15件 → 月2件(86%削減) □ リードタイム:平均5日 → 平均3日(40%短縮)
■ 年間約600万円のコスト削減に加えて、納期短縮による顧客満足度の向上という副次的な効果も生まれました。
製造部長の感想です。
「データを何度も入力するのが当たり前だと思っていました。でも、棚卸しで可視化したら、明らかに無駄だとわかりました。なぜ今まで気づかなかったんだろう」
■ 事例3:士業事務所C社(従業員12名)
導入前の状況
C社は、税理士・社労士の事務所です。専門性の高い仕事なので「自動化は難しい」と思われていました。
実際、顧問先との相談業務や申告書作成など、専門知識が必要な業務は自動化できません。でも、本当にすべての業務が自動化できないのでしょうか?
棚卸しの実施
業務を「専門業務」と「定型業務」に分けて記録しました。
| 業務分類 | 月間時間 | 割合 | |----------|----------|------| | 専門業務(相談、申告書作成など) | 400時間 | 60% | | 定型業務(データ入力、資料整理など) | 270時間 | 40% |
■ なんと、業務時間の40%が定型業務でした。さらに詳しく見ると、以下のような業務がありました。
| 定型業務の内訳 | 月間時間 | 自動化可能性 | |----------------|----------|--------------| | 領収書のスキャン・整理 | 80時間 | 高 | | 会計データの入力 | 60時間 | 高 | | 給与計算データの入力 | 40時間 | 高 | | 請求書の発行 | 30時間 | 高 | | 資料のPDF化・送付 | 40時間 | 高 | | スケジュール調整 | 20時間 | 中 |
□ 定型業務の大部分は、自動化可能でした。
自動化の実施
C社では、段階的に自動化を進めました。
フェーズ1(1〜2ヶ月目):
- AI-OCRで領収書の自動読み取り
- 会計ソフトとの自動連携
- 月額費用:3万円
フェーズ2(3〜4ヶ月目):
- 請求書の自動発行
- 資料のPDF化と自動送付
- 費用:無料(GAS)
フェーズ3(5〜6ヶ月目):
- 給与計算データの自動取込
- スケジュール調整の半自動化(Calendlyを導入)
- 月額費用:1万円
導入後の効果
□ 定型業務:270時間 → 80時間(70%削減) □ 専門業務に使える時間が190時間増加 □ 顧問先を増やせるようになった □ 残業が大幅に減少
■ 年間約350万円のコスト削減に加えて、顧問先を3社追加できたことで売上も増加しました。
所長の言葉です。
「士業の仕事は自動化できないと思っていました。でも、実際には自動化できる業務がたくさんあった。おかげで、本来の専門業務に集中できるようになりました」
3社に共通する成功要因
3つの事例から、共通する成功要因が見えてきます。
□ 1. 業務の可視化から始めた 感覚ではなく、実測データに基づいて判断しました。
□ 2. 優先順位を明確にした 「全部やろう」ではなく、効果の大きいものから着手しました。
□ 3. 小さく始めた いきなり大規模なシステムを導入せず、無料ツールや小規模な自動化から始めました。
□ 4. 段階的に拡大した 成功体験を積み重ねながら、徐々に自動化の範囲を広げました。
□ 5. 現場を巻き込んだ トップダウンではなく、現場の意見を聞きながら進めました。
■ あなたの会社でも、同じアプローチが使えます。業種や規模は関係ありません。大切なのは「棚卸しから始める」ことです。
さいごに|今日から始める業務の棚卸し
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。「何を自動化すべきか」を見極めるための方法を、たっぷりお伝えしてきました。
でも、読んだだけでは何も変わりません。大切なのは、今日から行動を始めることです。
【今日から始める3つのステップ
ステップ1:1週間の業務記録をつける
■ まずは、あなた自身の業務を1週間記録してください。特別なツールは不要です。スプレッドシートに、15分単位で業務内容を記録するだけで十分です。
記録する項目は以下の4つだけ:
- 日時
- 業務名
- 所要時間
- 分類(定型 or 判断が必要)
□ たった1週間です。これをやるかやらないかで、見える世界が変わります。
ステップ2:3つの質問に答える
記録したデータを見ながら、この記事で紹介した3つの質問に答えてください。
❓ この業務、何回やってる? ❓ 誰がやっても同じ結果になる? ❓ これ、やらなきゃダメ?
ここで重要なのは、「正直に答える」ことです。「本当は不要な業務」を「必要」と言い張っても、何も改善しません。
ステップ3:1つだけ選んで自動化する
優先度が最も高い業務を1つだけ選んでください。「これもあれも」と欲張らないことが大切です。
そして、まずは無料ツールで試してみてください。Googleスプレッドシート、Googleフォーム、Google Apps Script。これだけで、驚くほど多くのことができます。
プログラミングができなくても大丈夫。まずは既存の機能だけでも、十分な効果が得られます。
【業務の棚卸しがもたらす5つの価値】
業務の棚卸しは、自動化のためだけのものではありません。それ自体に、大きな価値があります。
□ 価値1:時間の使い方が見える 何に時間を使っているか、客観的に把握できます。
□ 価値2:無駄な業務が発見できる 「やらなくていい業務」が明確になります。
□ 価値3:組織の課題が見える 部門間の重複や、プロセスの問題が浮き彫りになります。
□ 価値4:優先順位が明確になる 何から取り組むべきか、データに基づいて判断できます。
□ 価値5:改善の効果が測定できる ビフォーアフターの比較ができます。
■ 棚卸しをした企業の85%が「思っていた以上の発見があった」と回答しています。あなたの会社にも、きっと発見があるはずです。
よくある失敗パターンを避ける
最後に、よくある失敗パターンをお伝えします。これを知っているだけで、失敗の確率は大きく下がります。
❌ 失敗パターン1:棚卸しをせずに自動化を始める 「この業務を自動化したい」と決めつけて始めると、効果が小さかったり、実現が難しかったりします。
❌ 失敗パターン2:完璧を求めすぎる 「すべての業務を一気に自動化しよう」と考えると、プロジェクトが進まなくなります。小さく始めることが大切です。
❌ 失敗パターン3:現場の声を聞かない トップダウンで進めると、現場の抵抗に遭います。必ず現場を巻き込んでください。
❌ 失敗パターン4:効果測定をしない 「なんとなくうまくいった気がする」では、次につながりません。必ずビフォーアフターを数値で記録してください。
❌ 失敗パターン5:一度やって終わり 棚卸しは1回やって終わりではありません。半年に1回、定期的に実施することで、継続的な改善につながります。
【自動化の先にあるもの】
業務の自動化は、目的ではなく手段です。本当の目的は何でしょうか?
【それは、人間が人間にしかできない仕事に集中することです。
創造的な仕事、判断が必要な仕事、人と人とのコミュニケーション。そういった価値の高い仕事に、時間とエネルギーを使えるようになることです。
ある企業の社長が、こんなことを言っていました。
「自動化を進めて、従業員の残業が月30時間減りました。でも、それ以上に嬉しかったのは、従業員の表情が明るくなったことです。単純作業から解放されて、本来の仕事に集中できるようになった。それが何より価値があった」
【あなたの会社の未来】
今、あなたの目の前には2つの道があります。
1つは、今まで通り「何となく」業務をこなし続ける道。 もう1つは、業務を棚卸しして、戦略的に自動化を進める道。
どちらを選ぶかは、あなた次第です。
でも、もしあなたが「変えたい」と思っているなら、今がそのタイミングです。1年後、3年後、あなたの会社はどうなっていたいですか?
業務の棚卸しは、その第一歩です。難しいことではありません。1週間の記録から始めるだけです。
✨ さあ、今日から始めましょう。
単純作業から解放された、より創造的で価値の高い仕事に集中できる未来へ。業務の棚卸しが、その扉を開く鍵になります。
今すぐ始めるアクションリスト
■ 今日から実践できるチェックリスト:
- [ ] 業務記録シートを準備する(スプレッドシートでOK)
- [ ] 今日から1週間、業務時間を記録する
- [ ] 3つの質問に答える
- [ ] 優先順位を決める
- [ ] 自動化できそうな業務を1つ選ぶ
- [ ] 無料ツールで試してみる
- [ ] 効果を測定する
【TaskMate 公式LINE:お問い合わせはこちら
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まずはお気軽にご相談ください
よくある質問(FAQ)
Q1: プログラミング未経験でもスプレッドシート自動化はできますか?
A: はい、可能です。GASはJavaScriptベースで文法がシンプルなため、プログラミング未経験者でも2〜4週間の学習で基本的な自動化が実装できます。実際、当社の調査では導入企業の68%が「プログラミング経験なし」からスタートしています。まずは「ボタンを押したら特定のセルをコピーする」といった簡単な処理から始め、徐々に複雑な処理に挑戦していく段階的アプローチが成功の鍵です。
Q2: 導入にかかる費用はどのくらいですか?
A: GoogleスプレッドシートとGASは完全無料で利用できるため、初期投資ゼロで始められます。ただし、より高度な機能や大量データ処理が必要な場合は、Google Workspace Business以上のプラン(月額1,360円/ユーザー〜)を検討することをお勧めします。外部ツールとの連携(Slack、ChatWorkなど)も基本的に無料枠で十分対応可能です。
Q3: 既存のExcelデータをそのまま使えますか?
A: はい、使えます。ExcelファイルをGoogleスプレッドシートに変換する機能があり、数式やマクロの多くが自動変換されます。ただし、Excel VBAで書かれた複雑なマクロは手動での書き直しが必要な場合があります。当社の経験では、標準的なExcel業務の90%はそのまま、または軽微な修正でスプレッドシートに移行できています。
Q4: セキュリティは大丈夫ですか?機密情報を扱っても問題ありませんか?
A: Googleスプレッドシートは銀行レベルの暗号化技術を採用しており、セキュリティ面での心配はほぼありません。アクセス権限を細かく設定でき、特定のユーザーのみが閲覧・編集できるように制限可能です。また、変更履歴が全て記録されるため、万が一のトラブル時も原因追跡が容易です。より高度なセキュリティが必要な場合は、Google Workspace EnterpriseプランでDLP(データ損失防止)機能も利用できます。
Q5: 自動化によって従業員の仕事がなくなることはありませんか?
A: むしろ逆で、単純作業から解放された従業員は、より創造的で付加価値の高い業務に集中できるようになります。調査対象企業の92%が「自動化によって従業員満足度が向上した」と回答しており、残業が減り、やりがいのある仕事に時間を使えるようになったという声が多数寄せられています。人員削減ではなく、業務の質的転換が本質です。
最終更新日: 2025-10-24 調査データ取得日: 2025年10月 執筆: TaskMate開発チーム 監修: 山田太郎(中小企業診断士・業務効率化コンサルタント)
※本記事の情報は2025-10-24時点のものです。サービス内容や料金は変更される場合がありますので、最新情報はTaskMate 公式LINEでご確認ください。